延命治療を希望するのか、しないのか どう本人の意思を医師に伝えるのか!?

延命治療は希望しないと本人が思っていても、病院に行けば、結局、家族の意向を優先に方針が決められていくのではないか。

延命措置についてどう本人の意思を伝えられるのかは、大きな課題です。

以前、「介護の社会化を進める一万人市民委員会in八王子」で在宅診療医として活躍されている数井先生をお招きし、お話を頂いたことがあります。

お話を聞きながら、改めて本人の意思を医療関係者に伝える難しさを感じました。

「救急車を呼ぶのは、延命してほしいからでしょ。医師は患者が運ばれてくれば延命しますよ。延命してほしくないんだったら、なぜ救急車を呼ぶんですか。」

こういう話になると、それはその通りなんだなと思います。しかし、

(かかりつけの在宅診療医の先生がいて、すぐに見てくだされば別ですが、)

通常、医療の素人である家族は、緊急処置で助かるものなのか、もうだめなのかもわからないし、医師にみてもらって判断をしてもらうしかないので、救急車を呼ばざるとを得ないというのが現状ではないでしょうか。

でも、病院に運ばれても、呼吸器を付けたり、胃ろうをしたりするような延命治療を本人が望まない時は、いったいどのようにその意思を伝えたらいいのでしょうか。

少しでも長く生きていてほしいと思って、延命治療の選択をしてしまうご家族もあると思います。

しかし、ご家族だって、悩みます。

良かれと思って選択した延命治療が、本人を苦しませることになってしまったのではないかと、ずっと悔やんでいるというご家族のお話をお聞きしたこともあります。

何とか、もう少し延命治療の問題について道筋を付けられないのかと思います。

松本先生のお話で得られたヒント

今回、めじろ台安心ねっとが開催した松本先生の講演会で、延命治療とは何なのか。延命治療についての本人の意思を伝えるために、救急医療情報への記載は有効ではないのか、などお聞きしてみました。

というのも、私が活動している「めじろ台安心ねっと」では、万が一の時に備えて医療情報を医療関係者にきちんと伝えるため、

消防署にもかけあい、東京消防庁の救急活動基準の見直しや、地域への救急医療情報キットの導入を先駆的にやってきた経緯があります。

また、めじろ台安心ネットで作成した「安心ノート」にも延命治療についての希望を記入する欄を設けたりもしております。

(ただし、救急医療情報キットの項目には、延命治療についての項目は入れていません。)

一方、八王子市が市として新たに展開してきた救急医療情報の項目では、延命治療についての記載があるとのことです。

松本先生からは、延命治療については、骨折とか血が出ているとかに帯する治療や、脳梗塞などへの薬の投与などは、通常の治療の範囲でしょう。

その行為をすることで回復が見込まれると思われる治療なのか、今後も回復は厳しいと予想される中での治療なのかという辺りのお話がありました。

また、救急医療情報に書いてある延命治療についての記載事項は、本人の意思として尊重され、医療の選択に反映されているのかお聞きしたところ、

そこに書いてあるからそれが本人の意思だと受け止めて、反映してはいない。

医師は、本人の意思が直接確認できない時は、家族との相談で決めているのが、現状だということでした。

救急医療情報に記載してあっても意思が反映されない理由とは

なぜそうなるのでしょうか。

松本先生のお話では、延命治療について、国はガイドラインを作成し、一定の方針が示されて、昔のように医師が訴えられるような状況でなくなっているものの、ガイドラインはあくまでも法律ではなく、ガイドラインである。

救急医療情報に延命治療についての記載があっても、いつ判断したか、日付がきちんと書かれていない。もしかしたらずいぶん昔に判断したことで、考えが変わっているかもしれない。

本人の意思が確認できない時は、やはり家族の判断を優先するのが、現状とのことでした。

ただし、本人が、手記などいろいろとつづって、本人の意思が読み取れるようなものがあれば、医師は、裏付けとして本人の意思表示を尊重していくような流れにはなっていくだろうということもお話されていました。

松本先生のお話をお聞きして、なるほどと思いました。

確かに、本人の意思が記載されているといっても、いつ書かれたものが、はっきりしないと困る。

そして、医療を受けるサービスの受け手が、延命治療が何であるかをまだまだ十分理解でいていない可能性もあり、正確に延命治療のことを知らないかもしれないという状況で行った判断というのは、医師としてもとてもそのまま尊重できない。

かつてのような、医師が殺人罪に問われるようなことは今後はなくなっていくとは思われるが、まだまだ医師が訴えられる可能性があるという現状がある中では、医師としては、家族の意向を反映せざるを得ない現状があるということも理解できました。

本人の意思を家族にまず伝えることが大切

おりしも、私の身近でも延命治療をどうするかの判断を迫られた事例がごく最近ありました。元気でも大怪我をすれば、生死をさまようような状況に突然なります。

自分も家族も元気で怪我もしなければ、この問題は、全く関係ないで済みますが、実は、いつ誰が遭遇するかもわからない問題でもあるのです。

救急医療情報の記載事項が直接医療関係者の判断に使われなくても、もし、本人の意思を家族があらかじめ知っていれば、家族も当惑することなく、本人の意思を医師に伝えられると思います。

そういう意味から言えば、救急医療情報キットへの記載や、「安心ノート」への記載は家族とのコミュニケーションツールにもなり、決して無駄ではないと感じました。