昨年の11月に二日間にわたり開催された、「地方から考える『社会保障フォーラム』」では、

社会保障を取り巻く環境や、厚生労働省の予算の概算要求の状況、各所管課における政策の方向性や課題について、厚生労働省の各所管の課長や室長クラスの官僚の方を講師に話を聞くことができました。

地域保健、子育て支援、医療介護や高齢者の住居の問題、予防接種など重要な課題について、細かい資料の提供がたくさんあり、大変勉強になりました。

また、講演のテーマが終わるごとにその都度質疑応答の時間もありましたので、質問もでき、社会保障の現状と将来を考える上で貴重な学習の場となりました。

参加者は、東京、熊本、山口、富山、千葉など全国各地域からの参加で、その方たちとの意見交換などができたことは、たいへん有意義でした。

日本の社会保障の動向は?

一人当たりの医療費は抑制傾向にあっても、急速な高齢化と医療の高度化で今後は、医療費総額が今後GDPの伸びを大きく上回って増大する推定されています。また、医療制度を初め、年金制度や介護保険制度にかかる公費負担の将来推計を見ると、現行の制度では、社会保障制度の維持は困難になっていくことは容易に予想できます。国民の負担増はできるだけないに超したことはないですが、今後の制度の持続性が極めて危うい状況に来ている中で、長期的視野で国民も巻き込んで議論し改革を進めることが必要だと感じました。

日本の人口は近年横ばいですが、人口減少局面を迎えており、2010年時点で、生産人口割合、63.8%、高齢化率23.0%ですが、2060年には総人口が9000万人を割り込み、生産人口は、50.9%、高齢化率は39.9%になると推計されています。

国は制度改正に向け、低所得者への負担軽減措置をしていく方針で、良いことだと思いますが、それを支えるためには、所得の高い人がより多くの負担を担う必要が出てきます。

税金の無駄遣いの見直しがまず必要では?!

そのことを納得してもらうには、やはり従来から言われている税金の無駄遣いをなくし、税金の使われ方の透明性を確保すること、そして負担をすることで社会全体では、メリットが大きいことを負担する人が確信できないと納得できない話だと思います。行政としては、常日頃から、市民に対する情報提供をしっかりと行い、市民の声をきちんと受け止めた制度づくりをしていくことが大切だと思いました。

若者支援・子育て支援が欠かせない

日本の国債残高は、戦後最大になり、高齢者人口の増加で税収は伸び悩み、年金、医療費・介護費は増大していく一方ですが、支える世代は縮小していく一方です。高齢者福祉の充実に比べ、まだまだ予算のかけ方も少ない子育て支援、若者支援を進めなければ、今後の社会保障制度の持続はできないということも改めて痛感しました。

サービスを受けている人たちの実態把握を

現在社会保障審議会での審議が行われていますが、今後の制度改革に向け、厚労省はまず、サービス提供者である医療関係者、介護関係者といった現場の声にしっかり耳を傾けてほしいと思います。そしてそれと同時に、サービスを受けている人たちがどうなっているのかをきちんと把握することも大切だと思います。医療や介護について的確な改革を進めるためには、サービスを受けた人がどうなったのか、データという根拠を蓄積し、有効なケアのあり方を検討することが大切だと思います。

そして、私たち市民も、今後は、限りあるサービスを有効に使っていくために、利用者として感じている課題を出し合い、必要な人が必要な時にきちんと受けられるような制度とはどうあるべきかをしっかり考え、新たな知恵を出し合い、よりよい社会保障制度の改革につながるよう、案を出していくことが今後は重要になってくるのと思います。今回のセミナーでもこのことを痛感しました。