議員提出議案「朝鮮学校を『高校無償化』から排除しないよう求める意見書」の提案を行いました。

結果は19対14で無事可決しました。

自民党議員は、全員反対。単に高校無償化そのものに反対するだけでなく、制裁をしている国の国民だから朝鮮学校に通う子どもたちに助成することに反対との立場です。議論は平行線のまま採決となり、無事可決になりました。

#### 法律の趣旨からぶれてはいけない!

今回の法律の趣旨は「家庭の状況にかかわらず、すべての意志ある高校生等が安心して勉学に打ち込める社会をつくるため、家庭の教育費負担軽減をする」というものです。
この理念に基づき、政府の予算には、専修学校や各種学校はすべて対象として盛り込み、予算の概算要求もされていました。

しかし、中井拉致問題担当大臣の発言により、朝鮮学校を対象外とすることが急浮上。
川端文部科学大臣は、「外交上、教育の中身が判断の材料になるのではない」との見解を示し、極めて当たり前の正しい判断を示していたわけですが、鳩山首相はここでぶれてしまった!
第三者機関を設置し、朝鮮学校を対象とするのか審議するということになってしまいました。

#### 人権というものさしを思いだそう!

憲法や教育基本法の理念から、すべての子どもたちへの教育の機会均等の保障が求められています。

さらに、日本は子どもの権利条約や人種差別撤廃条約にも締約をしている国であり、それらの理念から見てもまた、国連の国際人権規約の規定からも、日本は、外国籍の子どもたちに対しても教育の機会均等を保障していくことが求められています。

無償化に当たり、特定の国の子どもを外交上の理由から差別し、除外することは、国際的人権基準から見ても大きな問題があります。

勧告を受けている国日本!

日本は、人種差別撤廃委員から、今回の朝鮮学校排除の問題で、勧告を受けて、改善を求められています。

これまでも、日本は、子どもの権利条約の理念から見て、在日コリアンの人たちへの差別に対して勧告をされ、改善するよう求められてきました。
このことは、日本弁護士会からも勧告を受けています。

朝鮮学校に対し、政府は、1条校として認めず、学校への助成を一貫してしてきませんでした。保護者の負担は重くなり、親が経済的に厳しいと子どもたちは、朝鮮学校に通いたくても通えず、母国語である朝鮮語や民族教育を受けることができなくなります。
子どもは自分の国の言葉や民族教育を受ける権利が保障されることが必要であり、日本政府の対応は、教育の機会均等の保障という点で問題があります。
(ただし、東京都や市レベルでは、助成金が出されています。ちなみに、八王子市や小平市では助成金は出していません。)

一方、大学受験資格は、多くの公立や私立大学で認めるようになり、インターハイ出場資格も認められており、朝鮮学校の認知の度合いは改められてきている点もあります。

ちなみに朝鮮学校には、北朝鮮籍の子どもたちだけでなく、韓国籍、日本国籍の子どもも通っています。

また、学校では朝鮮語も当然教えますが、教科書は、日本の教科書を参考して作られており、日本の学習指導要領に沿って指導が行われ、日本の高校のカリキュラムを網羅しています。現代文や古文の日本語の教科書は日本の教科書と見分けがつかないほどです。
そして、生徒の中には難関大学にも合格する子どもたちもいます。

#### 政府は、人権の保障を!

政権交代をしたのですから、これまでの政府の対応が是正されるとの期待があったのですが、ここに来て朝鮮学校を除外することを認めれば大きな後退です。
今後政府は、いかに朝鮮学校排除問題についても改善策をとるかが国際的に問われています。

拉致問題がある国だからという理屈は国際的に子どもの権利の視点からは通用しない話です。教育の無償化の問題は、外交上政治上の問題ではなく、教育の権利の保障の問題です。

なぜ在日朝鮮人の人が日本にいるのか。忘れてはならない歴史的経緯!

そして、なぜ在日朝鮮人の人たちが日本に存在し、朝鮮学校ができたのかも忘れてはいけません。
戦時中の多くの朝鮮人が日本政府によって、強制連行され、多くの人たちが日本に様々な理由で残らざるを得なかった。この問題について、日本政府はどこまで人権の回復をしてきたのか。

北朝鮮の拉致問題は多大なる人権の侵害であり、日本政府が早急に解決すべき重大な問題であることは変わりません。

しかし、朝鮮学校に通う子どもたちの教育の保障はまったく別問題です。子どもたちは国籍を選んで生まれてきたわけではなく、なぜ自分の国籍が違うのか。日本にいるのか理解できないわけです。
「自分のルーツを知ることが自尊感情を育てることになる。」「差別からくるいじめにも耐えられた」こんな子どもたちの声があります。
私たちは、今一度、歴史的視点からものごとをとらえ、なぜ在日朝鮮人の人たちがいるのか、朝鮮学校があるのかを考え、民族教育について受けたい人たちには受けられるよう環境整備をしていくことが必要です。

朝鮮学校の問題は、日本の歴史の問題、私たち社会の問題でもあるのです。

朝鮮学校を排除しないようさらなる働きかけも必要

朝鮮学校を高校無償化から除外することは、在日コリアンの人たちに対して二重の差別を行うことになり、日本はさらに人権問題について国際的立場を悪化させていきます。

今回可決された意見書の趣旨が、しっかりと国に届くよう、別のところからも働きかけていく必要があります。

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