市議会を傍聴しましたが、私ならこう質問するのになと思うこと、疑問に感じることがたくさんありました。とくに本日の[市街化調整区域の保全に向けた適正な土地利用に関する条例]は、疑問だらけでした。

市街化調整区域は市街化を抑制し、緑地や農地を保全すべきエリアと言えます。
しかし、市街化調整区域内における資材置き場や駐車場、残土処理場、廃棄物処理施設など建築物を伴わない土地利用については、規制の対象外となっており、本来ふさわしくないにもかかわらず、規制ができない状況があり、市としてもその対応に苦慮してきた経緯があります。

今回上程された「市街化調整区域の保全に向けた適正な土地利用に関する条例」は、前文をさらっと読むと、こうした好ましくない開発に対し、市が規制できる後ろ盾ができることになるというふうに受け止められ、とても歓迎すべき条例と思えます。

しかし、条例をよくよく読み込むと疑問もわき上がってきます。
委員会の質疑を聞いていて、どうしても納得がいかなかったのでここで指摘をさせていただきます。(議席がなくて残念です。)

市は、開発規制をしていきたいと考えつつも、その一方で、市街化区域において、開発を認めてほしいと考える市民がいてそれにも応えたいし、行政としても産業振興という視点から市街化調整区域の土地を活用していきたいとの考えもあります。

この開発規制と活用という二つの物差しは、実は、市が作成した「八王子市市街化調整区域基本方針」の中で表現をされています。

ところが、今回上程された条例の条文を見ると、そのことがストレートに表現されていない。極めて曖昧な条例になっています。

条例の前文で、「尊い緑を守り、次世代に引き継ぐ」とうたい、緑地や農地の保全のための条例との印象づけがされています。
その一方で、
「本市では、市街化調整区域にふさわしい土地利用のあり方と施策の方向性を示した『八王子市市街化調整区域基本方針』を策定した。本市では、この基本方針にのっとり、市街化調整区域のうち自然環境及び営農環境を保全すべき区域について、他の法令及び条例と相まって、あるべき姿を実現していくため、この条例を制定する。」
とうたっています。

そして、条例の目的でも、自然環境と営農環境の保全が強調されています。
「市内の市街化調整区域における土地利用に関する手続、基準その他必要な事項を定めることにより、市街化調整区域の保全に向けた適正な土地利用を図り、もって市民のかけがえのない資産である自然環境及び営農環境を保全し、これを後世に継承していくことを目的とする。」とあります。

つまり、前文と目的をさらりと読むと緑の保全のための条例と受け止められるのですが、市が策定した「基本方針」には、活用の要素もちゃんと入っていて、
条例には書いていないけれども、市は、市街化調整区域は活用もしますよっと言っているわけです。

最初から、基本方針で示している内容を条例にきちんと入れて、緑の保全ゾーンは、保全に努めますが、それ以外のところでは、開発を認め、支援するところもあるということを示していれば、わけのわからない条文にはならなかったと思います。

過去に制定された条例を振り返ってみると、
「市街地内丘陵地のみどりの保全に関する条例」では、市は、第三者的立場の斜面緑地保全委員会を設置して、保全区域の指定や買い取りについて、公平性を担保する仕組みを作りました。
しかし、今回の条例では、緑の環境保全ゾーンや緑の創出・回復ゾーンを市長が、市規則によって、指定することができるということであり、「市街地内丘陵地のみどりの保全に関する条例」で定めるような第三者的な機関はこの条例には盛り込まれてはいません。

このゾーニングこそが極めて重要だと思いますが、基本方針を見るとゾーニングをしますとは書いてあっても、ゾーニングをどういう根拠に基づいてしていくかは明確に示されていません。

市規則で市長が指定できるとしていますが、市規則のあり方については、委員会質疑ではとりあげられませんでした。だからわかりません。

共産党からは、この条例のあいまいさは問題であるとして、修正案が提出されました。
共産党の議員からは、今回の条例で掲げる緑地や農地の保全を進める趣旨には賛成としつつも、「八王子市市街化調整区域基本方針」ということばが盛り込まれているが、条例が市長の裁量でどうにでもなり、議会が関与できない基本方針に左右されることは、問題である。市民の権利や行動を規制する根拠が明確でない。 市民にとって周知の事実でないなどの理由が挙げられ、基本方針を抜いた条文が提案されていました。

私は、今回の条例については、基本方針ということばを抜きには、この条例の趣旨は明確にならないと思いますので、基本方針ということばを抜いた条例案には、賛成できません。しかし、条例の文章が極めてあいまいであることは確かです。

本来市が意図している開発規制と開発支援の両方の物差しをオブラードで隠してしまって市民にはとてもわかりにくい条例です。

この条例だと運用についても,また、緑地ゾーンの決定について市規則にゆだねられており、条例に第三者的しくみがなく、市規則も明確でないので、善意に運用されれば緑地や農地の保全に有効ですが、
運用によっては、市街化調整区域は、どんどん市街化できることにもなり、条例の運用のあり方には、不安を感じざるを得ません。

残念ながら、こうした視点から質疑を行った議員は委員会ではいなかったので、とても残念でした。
議席がないのは、やっぱり、返す返すもとても残念です。